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原題 Living with Vincent van Gogh
著者 Martin Bailey
分野 芸術/伝記/作品集/ファン・ゴッホ
出版社 White Lion Publishing
出版日 2019/4/25
ISBN 978-0711240186
本文 本書は、フィンセント・ファン・ゴッホの人生を振り返りながら、彼が生活した場所、そこで交流した人々が、彼の作品にどのような影響を与えたかを、合計110枚にも上る豊富な資料写真(手紙、肖像画、当時の風刺画、風景写真、作品、書類)を使って検証するものである。表紙に使用されている『ファン・ゴッホの椅子』の画像も美しい。

ファン・ゴッホは、寄宿学校に入学するため11歳で生家を離れてからというもの、様々な場所に移り住んだり、家族の元に戻ったりを繰り返した。しかし、南仏アルルの「黄色い家」を除いては、本来の意味での「家」は生涯持つことができなかったと考えられている。唯一の例外と思われる、アルルでの暮らしも僅か15カ月で終止符を打っている。とは言え、ファン・ゴッホが過ごした場所や、そこで交流した人々は、彼の作品には大きな影響を与えることになった。

例えば、1882年に住み始めたハーグでは身重の娼婦シーンをモデルとして使ううちに親しくなり、生まれてきた男の子と、当時5歳になっていたシーンの長女と一緒に暮らすようになった。ファン・ゴッホが女性と暮らしたのは、これが最初で最後であり、自分の子どもではないにしろ、生家以外で「家族」のような暮らしを経験した。この時期のファン・ゴッホは妊娠中のシーンや子供たちを描いているが、イギリス人イラストレータの影響を受け、リトグラフや色彩を取り入れるようになり、『スヘフェニンゲンの海の眺め』などを残している。シーンの精神が不安定になったため、家族のような暮らしは1年で破綻し、ファン・ゴッホはハーグを離れ、オランダ北部ドレンテ州に向かった。1904年、シーンは自殺によりこの世を去っているが、これはファン・ゴッホの初めての大きな展示会が開かれてから、僅か12日後のことだった(ファン・ゴッホは1890年に自殺している)。

このように、本書はそれぞれの土地でのファン・ゴッホの暮らし、ゆかりのあった人々、取り入れた技法と残した絵画を一つずつ丁寧に解説している。