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原題 Leonardo da Vinci: Self Art and Nature (Renaissance Lives)
著者 Francois Quiviger
分野 歴史/伝記
出版社 Reaktion Books
出版日 2019/6/10
ISBN 978-1789140705
本文 2019年はレオナルド・ダ・ヴィンチの没後500周年にあたるため、ルネサンス期を代表する芸術家、ダ・ヴィンチの生涯や業績が再び脚光を浴びている。ダ・ヴィンチは、『モナ・リザ』、『最後の晩餐』、『岩窟の聖母』などの絵画作品だけでなく、音楽、建築、数学、幾何学、天文学、物理学、力学を始めとするさまざまな分野で多大な功績を残している。彼の業績が、ヨーロッパの芸術と科学に大変革をもたらしたと言っても過言ではないだろう。本書は、ダ・ヴィンチの生涯を、3つのテーマ(自然、芸術、自己成型)を切り口として再検証するものである。

ダ・ヴィンチはトスカーナで幼少時代を過ごしてから、フィレンツェで最も優れた工房に入門し、画家としての才能を開花させた。また、ごく基本的な教育だけを受け、農夫と職人の間で育ったにも関わらず、自分のスキルを自然科学の世界に応用する方法を自分で身につけた。そういう意味において、ダ・ヴィンチは自己成型の人物であったと言えるだろう。1480年代までには宮廷画家として、王族の間にも名をはせるようになった。

本書はダ・ヴィンチの人生の軌跡を幼少時代から追いながら、芸術家、廷臣、思考家としての側面を検証し、それが彼の絵画や自然科学研究にどのように影響を与えたかを解説している。そして、多くの専門分野にまたがる芸術家、芸術と科学の想像力を統合できるモデルとして、現代社会との関連性を説いている。

『モナ・リザ』を知らない人はいないだろう。しかし、幼少時代からのダ・ヴィンチの人生を知っている人は思いのほか少ないはずだ。天才ダ・ヴィンチの業績と人生について知りたい人におすすめの一冊である。