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原題 How America Became Capitalist: Imperial Expansion and the Conquest of the West
著者 James Parisot
分野 政治/国際関係
出版社 Pluto Press
出版日 2019/2/1
ISBN 978-0745337883
本文 現在のアメリカが資本主義国であることは疑う余地がない。だが、だからと言ってアメリカがはじめから資本主義国だったとは言えない。本書はアメリカの資本主義を歴史的な視点で紐解き、アメリカが「徐々に」資本主義国となっていく過程を明らかにする。

アメリカは世界の資本主義の中心であると自認し、今やその社会や政治は、経済システムと深く結びついている。従来の社会科学の学説でも、資本主義は人間に必要な、「自然に」生まれた経済システムだとする考え方が一般的だ。しかし著者は、植民地時代からのアメリカの歴史を振り返る中で、アメリカがもともと資本主義の国だった、いうのは誤った通説だと主張する。白人の入植者がアメリカに入ってきた頃から資本主義の考え方はもちろん存在したが、当時は決して支配的な考え方ではなかった。フロンティアを求めて西へと拡大する勢いも、資本主義の考え方から自然と生まれたものではなかった。

社会学者である著者は、アメリカの歴史を人種、性別、階級といった複数の視点で描いている。例えば、資本主義は男性を体制の中心に据えることで強化されていったという。男性が家族、労働、法律、社会の支配側に立ち、女性は家庭で子どもを産み育て消費活動を支える。これは自然に生まれたシステムではなく、当時のアメリカの政治が作り出した産物だという。

格差の拡大や経済成長の限界といった「資本主義の行き着く先」が議論される中、あらためて資本主義をさまざまな視点から考えるきっかけとして興味深く読める。