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原題 Carnivorous Plants
著者 Dan Torre
分野 ガーデニング/文学/映画
出版社 Reaktion Books
出版日 2019/3/11
ISBN 978-1789140521
本文 世界中のさまざまな種類の食虫植物の性質や構造を豊富な写真やイラストとともに紹介し、併せて食虫植物が人間の芸術や文化の中でどう扱われてきたかを紐解く。食虫植物という一風変わった植物について知ることができるだけでなく、映画や文学などの芸術に興味を持つ人には、知的好奇心がくすぐられる。

本書の前半は、食虫植物の植物としての特徴が紹介される。「どのように進化してきたのか」「なぜ、どのように動物(主に虫)を捕獲するのか」「どうやって栄養を摂取しているのか」といった疑問を通して、読者はその不思議な魅力を知ることができる。例えば、食虫植物と虫の関係は、単に食べる・食べられるだけの一方的な関係ではない。食虫植物は、受粉のために(獲物でもある)虫に依存しているし、消化を行う際にバクテリアが作る消化酵素に頼っているものもある。

こうした食虫植物の恐怖さえも感じる不思議な魅力に、人間は魅了されてきた。本書の後半は、文化的な分野でこれまで食虫植物が折に触れて注目され、多くの芸術の題材として取り上げられてきたことを紹介している。アメリカの映画監督エド・ウッドによる『エド・ウッドのX博士の復讐』やポケモンのモンスター(マスキッパ)といった大衆文化から、シュルレアリスム(超現実主義)の絵画といった芸術の分野まで、食虫植物が登場する作品は多い。カラフルでエキゾチックな葉の形状から、デザインの分野でもモチーフとして使われている。食虫植物には、人間の想像力をかき立てる魅力があるのだ。

全編を通じて驚きの連続で、飽きることなく読める。カラーの写真やイラストが豊富に掲載され、目でも楽しめる図鑑のような楽しさがある一方で、文学や映画など芸術の世界にふれる面白さも味わえる一冊である。