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原題 The Artist's Garden: How Gardens Inspired Our Greatest Painters
著者 How Gardens Inspired Our Greatest Painters
分野 ガーデニング/美術
出版社 White Lion Publishing
出版日 2019/10/8
ISBN 978-1781318744
本文 画家にとって、庭はプライベートな生活の中で英気を養う憩いの場であると同時に、作品のインスピレーションを得る対象でもある。画家が初めて絵を描くとき、花や庭をテーマに選ぶことが多いという。歴史上の偉大な画家たちは、それぞれ愛する自分の庭を持っていた。本書は誰もが知っている有名な画家たちを採り上げ、彼らの絵画作品、お気に入りの庭、庭との関わり、庭へのこだわりや風景などを紹介する。

本書の前半は、10名の画家を採り上げている。それぞれの生まれや育ち、住んだ地域と家、そして庭を紹介し、画家たちの人生や画風が代表作(おもに庭や自然と関係のある作品)の写真とともに語られる。とくに、画家たちがどんなこだわりを持って庭を造ったか、反対に庭が作品にどんな影響を与えたかを読者は豊富な写真とともに知ることができる。

後半は、同時代の画家たちのグループに注目する。同じ画風を持った画家たちは往々にしてどこかの拠点に集まって団結し、運動を広げていった。フランスの小さな村ジヴェルニーにあるクロード・モネの家が、フランス印象派の画家たちの交流を促す場となっていたことはあまりにも有名である。同様に、デンマークのスカーゲン村やフランスのジェルブロワ村など、村全体がそうした芸術の拠点となった例もある。庭を始めとした田舎の美しい自然の中で、画家たちの芸術運動が盛り上がりを見せていったのだという。

本書は画家たちの人生と作品を「庭」という視点から描くことで、絵画好きの読者にとってもガーデニング好きの読者にとっても興味がそそられる本になっている。絵画の写真、そして画家たちの庭や家の写真が数多く盛り込まれ、半ば写真集のような構成となっているため、幅広い読者が手に取りやすい一冊と言える。