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原題 Digitalis: How to reinvent the world
著者 Thierry Geerts
分野 社会/インターネット/ビジネス自己啓発
出版社 Lannoo Publishers
出版日 2019/1/29
本文 ヨーロッパでは長きにわたって、企業による、業務のリストラやレイオフといったニュースが紙面を賑わしてきた。2016年9月には著者の暮らすベルギーでも米キャタピラー社が現地の工場を閉鎖し2,200人の従業員は職を失った。そういったニュースが流れるたびにメディアは何度も「デジタル化が雇用をおびやかす」と繰り返した。

しかし、実際のところ多くのヨーロッパ諸国の雇用状況は過去と比較しても良好であった。つまり創出された雇用は失われた雇用よりも多かったということだ。往々にして暗いニュースは明るいそれを覆い隠す。

著者がグーグルで、ベルギーとルクセンブルクのカントリー・ディレクターを務めて7年経つ。デジタルの分野で最もイノベイティブな企業の1つである同社に勤める前は、StandaardやHet Nieuwsbladといった新聞を発行するベルギーのメディアグループに籍を置いていた。

2つの対照的な職場を経験した著者は、世界の変化を誰よりも肌に感じることができた。彼は主張する。デジタル化はヨーロッパとその市民に貴重な機会を提供する、そしてこれらの機会を「いま」つかむことがとても重要であると。

本書は読者をDigitalisへといざなう。Digitalisの住民は40億人、彼らは皆インターネットによって相互に接続している。デジタル化がもたらした新たな選択肢によって、健康、教育、モビリティ、経済、社会といった分野の諸問題の解決を試みている国。

敢えて挑発的な言明を交えた本書は、恐れを捨て昨今のデジタル革命の進行を快く受け入れろという力強い呼びかけだ。デジタル化がもたらした社会、文化、そして経済における変化。この世界を1から「再発明」することが私たちにできるのだろうか。