ブックレビュー ブックレビュー

原題 Liutenant Kurosawa’s Errand Boy
著者 Warran Kalasegaran
分野 フィクション/歴史小説
出版社 Epigram Books
出版日 2018/7/5
ISBN 978-1912098583
本文 1941年12月8日に太平洋戦争が勃発し、日本はシンガポールを占領する。その時八歳だったタミル人の男の子は父親とはぐれ、日本人の憲兵隊のために働くことを強制される。「ナンバン(南蛮)」と名付けられた男の子に、中尉のクロサワ・タケシは日本語や日本の風習、武術や天皇に祈ることを叩き込む。シンガポールにおける日本軍の残虐行為を目の当たりにし、時にはそれを手本にしながらナンバン自身も厳しい時代を生き延びる。しかし、日本の無条件降伏を告げる玉音放送が流れると状況は一変する。ナンバンは無情な仕打ちを与えた中尉や、自身の行いを許せるのだろうか?

およそ二十年後の1962年、パパッティという名の若い女性がシンガポールでお針子として生計を立てようと四苦八苦していた。抜け目のない政治家と情熱的な港湾労働者という、対照的な男性二人からの求婚、その後の喪失などを経てパパッティは成長していく。

何十年という時を超え、ナンバン、パパッティ、クロサワ中尉の人生は思いもよらぬ形で交差することとなる。日本占領から独立まで、シンガポールを舞台として、異なるバックグラウンドを持つ様々な人物の視点からその歴史を描いた小説。

2016年度Epigram Books Fiction Prizeロングリスト、およびSingapore Book Awards Best Fiction Titleショートリスト・ノミネート作品。