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原題 The Unworry Book
著者 Alice James
分野 精神医学
出版社 Usborne Publishing
出版日 2019/1/2
ISBN 978-1474950770
本文 日本では、まだあまり見かけないタイプの本だと言える。特に、その内容とは裏腹にポップでキュートな作りになっているのが斬新なところだ。難しい専門用語などは一切使われておらず、不安が大きくなってしまったとき、どんな風に落ち着かせればいいのか、読者は本に書き込みをしながら一緒に考えられるようなつくりになっている。

本書は冒頭で「不安に思うことは悪いことではない」と語りかけてくる。不安や心配というのは、自らを危険から守るための本能なのだから、と。不安を感じる度合いは人によって大きく異なり、なかには些細なことでもパニックになってしまうほど強い不安に襲われる人もいるものだと記されている。そしてそんなときは、自分に合った方法で落ち着きを取り戻そうと提案してくれている。たとえば、今の気分を色で表してみたり、気持ちの地図を作ったり、不安な気持ちをキャラクター化してみよう、などと不安や心配から遠ざけてくれるような仕掛けが随所に散りばめられている。ペンを持って紙に気持ちを表すことで、自分が何を恐れているのかを具現化するためだという。そうすることで、不安に思っていることの正体は意外と大したことないのでは? と気づかせる効果が期待できるのだそうだ。

ただ単に「大丈夫ですよ、落ち着いて」と言うのではなく、本人に不安の種を気づかせ、さらにそこからどうすればいいのかを実践させる作りになっている。不安な気持ちを科学的な面から検証しているページや、心理学者の言葉を借りて説明してくれている部分もあるため、見た目のかわいらしさとは対称にかなり本格的な内容となっている。不安が大きく膨らんだとき、大切なのは「人生において重要なものや、目標について意識を集中させること」なのだと本書は示している。読者にとって重要だと思われるものを書きだすスペースなども用意されており、別のことに意識を集中させて不安を和らげる工夫がなされている。

不安や心配は決して悪いことではなく、そう感じる自分を責める必要はないのだと本書は訴えかけてくる。必要なのは、その不安を受け入れて対処することなのだ。不安を無視しろと言うわけではなく、きちんと自分の感情と向き合い、うまく付き合っていく手助けをしてくれる一冊だ。