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原題 The Selfish Ape -Human Nature and Our Path to Extinction
著者 Nicholas P. Money
分野 生物/社会
出版社 Reaktion Books
出版日 2019/7/30
ISBN 978-1789141559
本文 ニコラス・マネーは、菌学者で、菌類についてのユニークな書籍を数々執筆してきた。菌類は病気・腐敗の原因など、古来薄気味悪がられてきた。だが、人間が出現するはるか昔に地球上に現れた菌類は、地球上の物質循環に深く関わってきたのだ。菌類は地球の先住民であり、生態系の欠くべからざる成員の一つで、高等だと自惚れている人類よりも、いろいろな点で生き残りのための戦略・戦術を身につけているという。

本書で著者は菌類ではなく人間に焦点を置き、生物学的・社会学的に人間を考察している。どのようにして人間は存在するようになったのか、どのようにして人間の体は機能するのか、どのようにして人間は絶滅するのかなど、人類遺伝学、生殖、脳機能、老化についての素朴な疑問に対して著者なりの回答を提示していく。その過程で現代の生物学で常識だと思われていたことを次々と覆していき、人間の偉大さと過ちの両方についての議論を織り交ぜつつ、いかにして人間が生物圏を不当に占有してきたかについて述べている。

今までの著書同様、本書も全編にわたってユーモアとウィットに加えて、ジョークにあふれ、専門的な内容の割に退屈する暇がない。生物学の本のなかには眠気を催すような難しい本はたくさんあるが、本書のようにとても読みやすく楽しみながら読める生物学の本には、滅多にお目にかかれない。