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原題 Eager: The Surprising, Secret Life of Beavers and Why They Matter
著者 Ben Goldfarb
分野 動物学/地理学/環境
出版社 Chelsea Green Publishing
出版日 2018/7/20
ISBN 978-1603587396
本文 やもすれば害獣だと目されがちなアメリカンビーバー。実はこのビーバーこそが北米大陸やヨーロッパの地理の形成に貢献し、水路をめぐる生態系や生物多様性を守ってきたのだ、と筆者は語り、読む者の固定観念を鮮やかに覆してくれる。

かつては北米大陸に1500万匹から2億5千万匹も生息していたと言われるビーバーは、19世紀に毛皮を目的とした乱獲の歴史を経て、著しく数が減少した。1920年代から1930年代にかけて、その数は回復したものの、元の多さには遠く及ばない。かつての生息地にビーバーを戻そうという動きはあるが、天敵の存在や、家畜産業や漁業といった業界の反発など、障壁が多い。本書を通じて筆者は、実際にはビーバーが生態系に存在している方が他の生物に対しても良い影響があるのだと論じている。それだけでなく、ビーバーを環境に戻すことで、大規模なダムを建てるまでもなく効果的に集水、貯水が行えるのだと言う。

ビーバーという単一の種が、土地や景観の形成に果たしてきた役割を歴史的に辿ることで、人間がビーバーに限らず他の生物たちと共生関係にあることを筆者は思い起こさせてくれる。他の生物との平和的な共存を目指すことがまずは重要であるが、さらに一歩進んで、いかに互いに利益をもたらしながら共に生きられるかを考えていかねばなるまいと呼びかける。