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原題 The Book You Wish Your Parents Had Read (and Your Children Will be Glad That You Did)
著者 Philippa Perry
分野 心理学/教育
出版社 Penguin UK
出版日 2019/4/23
ISBN 978-0241251010
本文 育児書と聞くと、まず何を思い浮かべるだろうか。親になったばかりで、右も左もわからない新米両親に対し、あれこれ指図する本といった印象を持っている人も少なくないのではないだろうか。ただでさえ出産を控えてナーバスになっているところに、そんな本を読む気になるだろうか? 育児に対する不安は、それで本当に消えるのだろうか? 

本書の最大の特徴は、育児書としての真新しさだ。「こんな時にはこうしなさい」などといった指示は、本書には書かれていない。では、何が書かれているのか。それは、こどもの気持ちを考えてあげることの大切さだ。我が子とはいえ、一人の人間であり、意思や感情を持った、自分とは別の人間なのだということを意識する重要性を意識させる育児書となっている。

たとえば、人間は自分とは違った考えを受け入れることを難しいと感じる生き物であり、意見を否定されることに対して強いストレスを感じるのが通常なのだという。それは親子という関係上でも特例として変化するわけではなく、こどもが親と違う考え方をした時、親は戸惑い、受け入れがたいと感じる。そして、無意識にその意見を否定してしまう。否定されたこどもは傷付き、時には怒りを覚える。親子とはいえ意見の相違は起こって当然のものと考え、一人の人間として意見を尊重してあげることが大切なのだと著者は述べている。そして、親が自身の失敗を責めすぎないことも大切だと主張している。自分自身を大切にすることで、自然とこどもに対する接し方にも余裕が生まれるのだそうだ。親としての自分を追い詰めすぎないことが、何よりも大切なのだと言う。

6つのカテゴリーに分けて、こどもを取り巻く環境のこと、感情の変化、そしてメンタルヘルスについても詳しく説明されている。メンタルヘルスの面から育児を語る本というのは、なかなか貴重なものだと言えるだろう。いわゆる「子育てマニュアル」のような型にはまった教科書ではなく、育児をする上で必要な心構えや心理的成長を促してくれるのがこの本なのだ。堅苦しい言い方ではなく、カウンセラーと実際に会話をしているような、そんな印象だ。そのため、時間をしっかり確保して「さあ、読むぞ!」と気張らずに空き時間を見つけて読める一冊となっている。

多くの読者が、本書のタイトルには納得せざるを得ないのではないかと思う。「ああ、うちの親もこの本を読んでいてくれたらな」なんて、苦笑いを浮かべる読者も多いのでは。そして必ず、自分が本書を手に取ったことを正しい判断だったと思うに違いない。