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原題 Murder on the Eiffel Tower
著者 Claude Izner
ページ数 295ページ
分野 コージー・ミステリー
出版社 Minotaur Books
出版日 2008/9/2
ISBN 978-0312383749
本文 19世紀末のパリを舞台に、古書店の店主ヴィクトル・ルグリが難事件に挑むコージー・ミステリーのシリーズ第1作。

1889年初夏、万博に沸くパリで、蜂に刺されたことが原因とみられる変死が相次ぐ。被害者たちに関連性がないことから、単なる偶然かと思いきや、新聞社に犯行声明文が届く。すわ連続殺人かと色めき立つマスコミ。だが、万博への悪影響を恐れた警察は、あくまで事故死として処理しようとする。

古書店の店主ヴィクトル・ルグリは、エッフェル塔の展望台で起きた第2の変死現場に居合わせたことから、事件に興味を持つ。独自の捜査を開始するが、調べれば調べるほど、彼にとって大切な存在であるケンジとターシャへの容疑が深まる。ヴィクトルは、なんとかして2人の容疑を晴らそうと、証拠探しに奔走する。

愛する人たちが凶悪な犯罪者だったらどうしようと悩み苦しむヴィクトルの姿は、とても人間的で、ときに微笑ましく、読者の同情を誘う。また、謎解きもさることながら、当時の有名な作家がヴィクトルの古書店の常連客だったり、まだ無名のゴッホやセザンヌが出入りする画材店が登場したりと、19世紀末のパリの芸術文化が各所に織り込まれていることも本書の魅力の1つだ。

エッフェル塔完成でにぎわうパリ万博会場の詳細な描写も含め、当時のパリの雰囲気を存分に味わうことができる、タイムトラベルと海外旅行を同時に楽しめるシリーズ。