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原題 Dirt to Soil: One Family’s Journey into Regenerative Agriculture
著者 Gabe Brown
分野 農林水産/環境/自然保護
出版社 Chelsea Green Pub Co
出版日 2018年10月11日
ISBN 978-1603587631
本文 農業を始めてまもなく、度重なる自然災害による被害を受け、ひどい経済的苦境に陥った著者とその家族。
農場経営を続けるためにさまざまな方法を模索した結果生まれたのが、「再生可能な農業(Regenerative Agriculture)」という新たな農業のスタイルである。これは、従来型農業で一般的に使われている除草剤、殺虫剤、合成肥料の大部分の使用をやめ、畑を耕さず複数の作物を同じ場所で一緒に育て、さらに放牧の方法も変えることで、農業の生態系を土壌から変えるというものである。現在ブラウン一家は5000エーカーの牧場で、さまざまな種類の商品作物や被覆作物(カバークロップ)の生産に加え、牛や羊、めんどり、豚などの家畜を育てて直接市場に卸し、利益を上げることに成功している。

本書の前半は、著者がノースダコタ州の家族農場で行っているこの「再生可能な農業」に着手することになったいきさつから、それが軌道に乗り、現在に至るまでの軌跡を追う。後半は、生物のいない土壌を健康な表土に変えるための5つの原則とその方法を段階的に説明。さらに、土壌の専門家や農業経営者の見解を交えながら、これからあるべき農業経営戦略を提案する。

本書は、農地の生産性を回復させるという現代農業の急務に対し、20年以上に及ぶ実験や改良を経て開発された、革新的な解決モデルを提示してくれる。ブラウン氏いわく、この問題の解決を妨げている最大の要因は人間の考え方である。「殺す」ことにすべての考え方を収束する工業型農業モデルではなく、どうしたらその土地により多くの植物や動物、益虫を増やせるかを、今後は考えていくべきなのであろう。