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原題 Moon: Nature and Culture (Earth series)
著者 Edgar Williams
分野 宇宙科学/天文学/文化人類学
出版社 Reaktion Books
出版日 2014/11/31
ISBN 978-1780232812
本文 人類が初めて空を見上げた時から、月はずっと変わらずに空に浮かんでいて、詩人や芸術家、科学者たちを魅了してきた。かつては信仰や畏れの対象とされた月だが、現在では地球の潮の満ち引きを司る存在として捉えられるように、人類と月との関係は時代とともに変化してきた。しかし、人類が月に魅かれ続けてきたことだけは変わりない。
月の物語は人類の物語でもある。月があるからこそ地球の自転は穏やかで、月がなかったら地球上の生命は存在しなかっただろうし、現在のような文明も生まれなかっただろう。月と地球は、誕生以来相互依存の関係にあり、人類は無意識のうちに文明や文化の月を組み込んできた。月の影響は文学、芸術、宗教、政治の世界でも色濃く見て取れる。本書では、文学やサイエンスフィクション、漫画や詩における月の役割や、なぜエリザベス1世が月の女神ダイアナと崇められたのか、さらには、民話や占星学における月や、月に住むという人類の長年の夢などについても探っていく。
また、本書には、月を題材にしたモチーフも多数ちりばめられている。月の観測写真はもちろんのこと、月から見た地球の写真や、月に降り立った宇宙飛行士の足跡、月のピラミッドやイースターに食べる月モチーフのお菓子もあれば、歌川広重の木版画『月夜木賊に兎』やゴッホの『星月夜』、マネ、ターナー、ルソーらの月を描いた作品までちりばめられている。
月とは人類にとって何なのか、月についてのあらゆる物語を、楽しい逸話と挿画を盛り込みながら紹介する。月を眺めるすべての人に、必読の一冊。