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原題 The Moon (Kosmos)
著者 Bill Leatherbarrow
分野 天文学/宇宙科学
出版社 Reaktion Books
出版日 2018/05/04
ISBN 978-1780239149
本文 「本書を書いた目的は、現在の月科学をわかりやすく解説すること、そして、その進化発展に大きく寄与してきた月観測と発見の歴史を明らかにすることである
」(前書きより)

肉眼で模様まではっきり見て取れる月は、地球に最も近い天体である。そんな月を眺めては、湧きあがってくる種々の謎や疑問を解こうと、人類は観測方法を進化させながら、月への理解も新たにしてきた。

太古の昔から、人類は月を眺めずにはいられなかった。古くは信仰や迷信の対象として月を崇め恐れてきたし、その満ち欠けのサイクルに気づくと、時間を測る単位として月を用いて暦を生み出した。中世以降は、望遠鏡の登場によって観測技術や発見が一気に進歩する。コペルニクスの唱えた地動説がガリレイの望遠鏡による観測などによって実証的に裏付けられると、月科学も一気に進化した。観測の積み重ねで月には山や谷があることがわかってくると、月には地球と同じような世界が広がっていると想像も広がったが、実際に宇宙探査時代に突入してみると、月はごつごつした岩と砂の世界でしかなかった。それでも人類の月への興味は尽きず、現在も地球からは見えない月の裏側の探査や、水や鉱物の存在の調査などが行われている。

時代とともに進化してきた月科学や観測の進化や歴史を、美しい図版と洞察に溢れた文章で紹介する必読の一冊。

また、本書では、60年以上も月観測を続けている著者が実践的な月観測方法を伝授。望遠鏡の種類、月の地図、観測記録のつけ方、宇宙機からのデータ活用など、入門レベルからプロまで役立つ月観測に必須の知識やコツを丁寧に解説している。
天文学の魅力は、プロもアマチュアも一緒になって科学の探究に集合的に参加できることにある。ぜひ実際に月の観測に加わってみては。