ブックレビュー ブックレビュー

原題 The Whole Story of Climate: What Science Reveals About the Nature of Endless Change
著者 E. Kirsten Peters
分野 地球科学・エコロジー/環境/科学読み物
出版社 Prometheus Books
出版日 2012/11/20
ISBN 978-1616146726
本文 現在、人類あるいは地球が直面する最大の課題の一つである地球温暖化に関して「新たな」角度から分析し、論争を呼ぶこと間違いない議論。前世紀末から世界中で懸念が示されるようになった地球温暖化の問題は、これまで気候学者、気象学者、あるいは気候科学者の専門分野として扱われるか、アメリカの元副大統領アル・ゴアがノーベル平和賞を受賞するきっかけとなったドキュメンタリー映画『不都合な真実』に代表されるようにセンセーショナルで、政治的でジャーナリスティックなトピックとして騒がれるようになっている。

しかしながら、著者はこのような捉え方だけでは地球温暖化の問題を正しく包括的に考えることにはならないと指摘する。気象科学という研究分野が生まれる200年ほど前から地球の気候が繰り返してきた劇的な変動を研究してきた「地質学」からの知見が、人類にとって極めて重要なこの問題を理解するために不可欠だとする。地質学者である著者の描く「地球温暖化」という現象は、われわれが通常見聞きする論議よりはるかに複雑で微妙な問題を多く含むことが明らかにされる。その一つには、有害な温室効果ガスさえなければ地球の気候は本質的に安定したものと考えがちだが、地球の歴史を千年スケールで振り返ってみればその気候は「常に」変動してきたという歴史的事実がある。過去200万年の地球の歴史において繰り返された氷河期はほぼ10万年続き、その間の(現在がそうである)間氷期は平均して1万年しか続かないのだ。だとすれば、現在「騒がれている」地球温暖化とはこの惑星の「長い」歴史上、どこまでが間氷期の特性で説明でき、温室効果ガスの有害性は許容される余地があるのか、などという極めて重要な議論を呼ぶことになろう。