ブックレビュー ブックレビュー

原題 Transform Teaching and Learning through Talk
著者 Amy Gaunt / Alice Stott
分野 教育
出版社 Rowman & Littlefield
出版日 2019/01/01
ISBN 978-1475840681
本文 従来の教育では、子供の「読む力」「書く力」が重視され、ペーパーテストで良い点を取ることが評価の基準だったが、一方で数値化しにくい子供の「話す力」についてはあまり重視されてこなかった。しかし、イギリスの州立校「School21」では、創立時から「話す力」(Oracy)を養う学校教育の重要性を掲げており、「Voice21」という専門のセクションを設け、「話す力」を育成する授業をカリキュラムに取り入れ、イギリス各地の学校への普及活動にも取り組んできた。「話す力」はコミュニケーションにおいて重要であり、積極的に人と話したり、議論をすることで、そこから新たなアイデアが生まれ、子供たちの自立を促すことにも繋がるからだ。

本書は、「Voice21」のディレクターであり、教育現場で豊富な経験をもつ筆者らによって執筆された、主に教師や学校関係者を対象とする指南書である。子供たちの「話す」能力を伸ばすために、教師はどのような準備を行い、どのように子供たちを指導すればいいのか、具体的な事例を挙げながら紹介している。

「話す力」がコミュニケーションにおいていかに重要かという理論的な説明から始まり、クラスにおけるディスカッション、ディベート、プレゼンテーションの具体的な指導法(テーマの決め方、グループ分けの方法など)が紹介され、「Voice21」の授業の実例が挙げられている。また、人の話を傾聴することや、活発で有意義な議論を生むための語彙(同意、反論、提案など)を教えることの大切さ、発言の少ない子供にも議論の参加を促す方法、「話す力」の客観的な評価方法など、理論だけではなく実際に教育現場で採用できる実用的なテクニックが、図やイラストも交えつつ、わかりやすい文章で紹介されている。

日本でも従来の「読み書き偏重」の学校教育のあり方が疑問視されている昨今、本書は教師や学校関係者に多くの示唆を与えてくれるだろう。