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原題 A Family of Cars
著者 Michel Mahy and Wouter Rawoens
分野 自動車/写真集/歴史
出版社 Lannoo Publishers
本文 世界的に有名なヴィンテージ・カーのコレクション、ベルギーのマーヒー家のコレクションは
約1100台で構成され1895年以降につくられた自動車の最も完全なコレクションとされる。そのうちの約400台はブリュッセルのオート・ワールド博物館とルーズ=アン=エノーにあるマーヒー家の博物館に展示されている。

ところが残りの約700台は一般には公開されず巨大な「格納庫」にひっそりと保管されている。それらの存在さえ疑われることもあったが、この度本書によってユニークなヴィンテージ・カーの標本とでもいえる「作品」が「芸術的」に撮影された写真とともに陽の目を見ることになった。これらの自動車には「復元作業」は施されておらずそれが写真では独特の雰囲気を醸し出している。

車好きにはたまらない魅力で、高額の料金を払ってでもこの「格納庫」への案内を請うところであろう。現代人の多くは、薄れゆく当時の壮麗さと美しいノスタルジーを思い描き本書のページを繰りただ沈黙することになろう。

本書はこの夢のような「格納庫」とその舞台裏を垣間見させる初めての写真集で、伝説的な「美しい」ヴィンテージ・カーの稀に見る写真とそれぞれが語る物語を現代に生き返らせる。ベルギー南西部エノー州のなだらかな丘陵地帯に広がる工場群では、歴史以外には何も製造されていはいない。工場郡の内部では1000台近くの自動車が埃まみれでひしめき合って無言のまま並んでいる。その一台一台が語るべき話を胸に秘めたまま沈黙しているのだ。だが、それこそがマーヒー家の三代にわたる当主にとっては彼らの「存在理由」となっていたのだ。彼らにも話がある。本書は数々のヴィンテージ・カーの物語であると同時にマーヒー家の人々の物語でもある。