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出版翻訳の舞台裏Column

原題 Martin Monath : A Jewish Resistance Fighter Among Nazi Soldiers
著者 Nathaniel Flakin
分野 歴史
出版社 Pluto Press
出版日 2019/10/20
ISBN 978-0745339955
本文 ゲシュタポに2度処刑された男Martin Monathの短い生涯(1913−1944)には、脚色など一切なくても十分にドラマチックだ。
Monathは第1次世界大戦中のベルリンで生まれた。1930年代にはシオニストの青年組織のリーダーになり、1939年にブリュッセルへと逃れ、トロツキー主義者の地下組織に加わった。1943年、パリに移り、フランス占領中のドイツ軍の下士官兵に向けた新聞「Arbeiter und Soldat (Worker and Soldier)」を発行し、ドイツ軍の中に反ファシズムの秘密組織を作り上げた。

フランスでの地下活動中はたくさんの偽名を使っていたため、著者はまず本名を突き止めるために途方もない労力と時間を要した。
この本の執筆につながる作業は、「Arbeiter und Soldat」に注釈を付けることから始まった。しかし、この新聞の発行者について短い序文を書こうとすると、すぐにそこに出てくる名前が全てViktorという人物の偽名だとわかった。さらに数ヶ月かけて様々な断片的情報をかき集めて、なんとかMartin Monathという名前にたどり着いた頃には、この活動家の本を書くしかないと考えるようになっていた。この物語は語られるのを待っていたのだと著者は述べている。

パリで地下活動中のMonathがある日クラシックのコンサートに行った。仲間が「ナチ党員に見つかったらどうするんだ?」と言うと彼はただ「ベートーヴェンを聴きに行っただけだ。ナチ党員は見かけなかった」と答えたそうだ。著者はパリのコンサートホールにいる彼を想像すると、タランティーノ監督の映画「イングロリアス・バスターズ」のクライマックスシーンを思い起こした。ただしMonathは爆弾でナチスと戦おうとしたのではなく、労働者による蜂起が目標だった。

これまでほとんど知られていなかったこのユダヤ人社会主義者、国際主義者、そして革命活動家の人物像を、著者は綿密な調査と彼に対する深い愛と賞賛をもって見事に描き出し、反ファシズムの歴史に偉大なヒーローとして復活させた。