ブックレビュー
| 原題 | Baseless: My Search for Secrets in the Ruins of the Freedom of Information Act |
|---|---|
| 著者 | Nicholson Baker |
| 分野 | 政治/行政 |
| 出版社 | Penguin Press |
| 出版日 | 2020/07/21 |
| ISBN | 978-0735215757 |
| 本文 | 米国の情報公開法は、どの程度まともに機能しているのだろうか。本書の著者は、朝鮮戦争で米軍が生物兵器を使用したのではないかという疑惑を調査する10年間の過程で、情報公開法の意図的な機能不全に苛立っていた。何年持っ待たされた挙げ句に出てきた文書が、判読できないように編集されていることも頻繁にあったからだ。 業を煮やした著者は、この妨害された調査の過程そのものを記録として残すことにした。政府担当官とのやり取りを克明に文書化したのが本書だ。そこで見えてくるのは、情報公開法の闇ならびに、CIAと米国政府が市民に対して隠してきたさまざまな陰謀とも言える事柄だった。生物兵器化された昆虫、ライム病の意図的な流行、市民には内容が示されない軍事実験など、隠された秘密が次々に明らかになっていく。 フィクション、ノンフィクションの両方のジャンルで高い評価を受けてきた著者による本書は、渾身のジャーナリズムでありながら大変おもしろく読むことができる。 |