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原題 Human
著者 Amanda Rees and Charlotte Sleigh
分野 生物学、文化人類学、科学、歴史
出版社 Reaktion Books
出版日 2020/05/11
ISBN 9781789142143
本文 「動物」をテーマにしたシリーズものの一冊。斬新な手法で「人間とは何か」を探求する。ヒューマニズム(人間性)は人がその時代の文化の中で、外部環境を形成する全てのカテゴリー(例えばペットや機械、神との触れ合いなど)と接触しながら形成されていく。
本書は人間を取り巻くこれらのカテゴリーが、神話や芸術、科学、技術、神学の各分をとおしてヒューマニズムの形成にどのように作用してきたかを生き生きと描写する。生態学、解剖学、人類学、生物学、食物学、衣食住文化など切り口の豊富さに驚かされる。ちりばめられた挿画や写真は意表をつくものが多くコメントを見ながら目で追うだけでも面白い。

「ヒトの染色体のペアはわずか23(チンパンジー24)、ヒトは類人猿の中で最も社交的」
「ヒトはセックスの面もユニーク(生殖状態に関係なくセックスを喜ぶ)」
「女性は排卵の外部シグナルを示さない(類人猿の中でもユニーク)」
「女性は強力な社会的なネットワークと協調を引き出すことができる」

著者は「私は人間(Human)であることを認識しているが、はたして人間とは何か知らない」と言う。あくまでも納得のいく答えを探求する。その衝動がヒシヒシと感じられる。現代に生きる我々すべてが持つ問題だ。もしかすると太古の時代から果てしない未来まで、ヒトが永遠に持ち続ける問題かもしれない。