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原題 SPITE: And the Upside of Your Dark Side
著者 Simon McCarthy-Jones
ページ数 265
分野 心理学/社会
出版社 Oneworld Publications
出版日 2020/10/22
ISBN 978- 1786078421
本文 アメリカのある哲学者は、道徳的美徳とは自分が他者に求めたいと感じる性格特性のことだが、悪意とはほかの人たちに感じてほしくない、だれの利益にもならない悪徳であると主張している。はたして、そうだろうか。

「悪」、それは時に善を推し進める力にもなり得る。悪意があるおかげで人よりも抜きんでた存在になることができ、何かを創り出すこともある。必ずしも協調を阻害するとは限らない。それどころか逆説的に協調を生み出すかもしれない。悪が必ずしも不正を生み出してばかりいるとも限らない。むしろそれを防ぐ強力なツールの一つである可能性もある。不正や不公平がある限り、「悪意」も必要になるからである。

本書では、なぜ人間は悪意を抱いてしまうのかを心理学・生物学・経済学などの知見を参照して考察している。

結果的に自分にマイナスになることが自明であるにもかかわらず他人を出し抜こうとする、あるいは、親しい友人の失敗をひそかに望んでしまうなど、私たちが日常的に悪意を抱きがちなのはなぜか。ささいな他人への嫌がらせから泥沼の離婚調停、職場での悪習慣、テロリズム、ドナルド・トランプに特徴的な悪意など、日常やメディア上で遭遇する事例を例にとり、普遍的に存在する悪意のケーススタディを検証する。また、SNS上に蔓延する悪意に満ちたメッセージを生み出す心理、それが拡散したり、共感されるプロセスや、それに対処する方法についても説く。

悪意には支配されることを嫌い、平等を目指す心理からくるものと、相手より上位に立とうとする心理に基づくものがある。筆者や、我々は悪意に基づいて進化してきた生物であり、それを正しく認識することで自由で平等な社会、さらには繁栄を実現できると主張している。

悪意や不寛容ばかりが取り巻いて見える現代社会を理解するために、また、そんな世界を生きていくための指針を得る目的でも、ぜひ読んでみたい一冊。