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原題 INSIDE BARCA
著者 Simon Kuper
分野 企業・経営、スポーツ競技、メディア・マスコミ・自己啓発
本文   サッカー世界最強クラブの一角を占めるFCバルセロナ(BARCA)を、日常生活の内部まで入り込んで、直接観察・取材した貴重な一冊。スポーツジャーナリストにとって、サッカーの取材ほど難しいものはない。取材ができるのはプレス・コンファレンスや、試合後の5分間程度の会見の場のみである。それもコーチやマネージャーからの言い訳のような話や、選手からのあたりさわりのないほんの一言二言のコメントのみだ。著者は16歳でイギリスのサッカー専門誌にはじめて寄稿するなどして学生時代からサッカー界の関係者と非常に親密な関係を築き上げている。その縁から今回、BARCAの奥深くまで入り込んで、取材することが可能となり本書発刊のチャンスをつかんだ。BARCAをサッカープレーの側面だけではなく、ひとつの “大企業” として、経営や組織運営まで入り込んで分析。組織はどのように機能しているのか、選手育成の秘密はどこにあるか、実権をもっているのは誰か、チームのバルセロナ市における地位は?わずか30年の間にカタロニア・クラブからヨーロッパのックラブへ、そして世界のクラブに、いかにして大変身・大飛躍したのか。ワクワクするような情報がギッシリと詰まっている。スポーツファン待望の一冊だ。

本書は全8章からなるが、内容的には大きく4つのトピックで構成される。
(1)「バルセロナ サッカーの父」といわれるオランダの天才サッカー選手ヨハン・クライフがアヤックスからバルセロナに移籍してバルセロナを再興した軌跡
(2)フットボーラーの育成方法。メッシは天才と仰がれる。だが著者は「彼は天才ではない」という。メッシのマジックの秘密は!? BARCAでは、才能こそがキングだ
(3)「BARCAの黄金時代(2008-2012)」そのコードブックとは?
(4)BARCAはどう機能しているのか。BARCAはどこへ向かうのか。経営のヘッドは15人から20人の入れ替えのきかない頭脳で構成される。他のクラブに比べて、特殊分野の専門家が多い(精神分析医、睡眠のエキスパート、データ分析員など)バルセロナ市を州都とするカタロニア州はスペインからの独立問題をかかえる。「武器をもたないカタロニアの軍隊」との異名をもつBARCAはどこへいくのか。