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原題 Loud and Proud: LGBTQ+ speeches that empower and inspire
著者 Tea Uglow
ページ数 176
分野 社会・歴史
出版社 White Lion Publishing
出版日 2020/05/05
ISBN 978-1781319222
本文  歴史上、世界に大きな影響を与えたLGBTQ+にまつわる40名超の著名人によるスピーチ集。まだ世界の3分の1以上の国では同性婚は違法であり、うち数カ国では死刑にすら値する現代国際社会において、声を上げ、ただ存在することを主張するというシンプルなことがいかに重要か、という視点から編纂されたのが本書。
 全ページフルカラーで、イラストをちりばめつつ、古くは1867年から、自らリスクを冒しながら大衆に向かって声を上げた人々とそのスピーチを、各2~4ページ程度で紹介している。それぞれの人物の肖像画ないし肖像写真のコラージュ1ページ、その人物の紹介やスピーチの背景の説明、そして実際のスピーチ全文掲載、場合によってはインパクトの強いフレーズや格言がスピーチから選ばれ、ページ一面に記されているという構成になっている。暴力と差別の恐怖の前で紡ぎだされた言葉の数々を扱った、大変シリアスな内容だが、明るい色彩と優しいデザインを用い、手に取りやすく読みやすい一冊となっている。
 その内容は、結婚の権利の平等や性の区分けの在り方から、いじめ、子育てなど、LGBTQ+が抱えるあらゆる問題を網羅しており、LGBTQ+コミュニティの幅広い多面性と多様性の様相をうまく表している内容となっている。本書で選ばれた人物は、自身もLGBTQ+であることを公表した著名人のハーヴェイ・ミルクやジョージ・タケイ、エルトン・ジョンから、世界的にはまだ知られていない運動家の数々、一方、自身はストレートであるが、LGBTQ+への強いサポートを表明している、バラク・オバマやロレッタ・E・リンチ、ヒラリー・クリントンなど、国籍・ジェンダー・人種・立場などの多様性に配慮されている。
 LGBTQ+運動の始まりは一般的には1960年代、70年代だと認識されることが多いが、実はその約100年前の1867年に、ドイツの政治家がすでにゲイ・ライツのための演説を行っており、本書はこれまでの近視眼的なLGBTQ+への視点を大きく広げ、現在も続いているLGBTQ+の戦いが歴史的にも長いルーツがあるという認識を呈した、分かりやすくも画期的な本である。
 LGBTQ+への不寛容や無知、差別が根強いと言われている日本でも、昨今では若い世代に人気のタレントがカミングアウトをしたり、YouTubeやSNSの普及により、性の多様性への理解と興味が高まっている。肩ひじ張らないが、しっかりとLGBTQ+の足跡を示した本書は、そんな今の日本で気軽に手を取ってもらえる一冊となるのではないだろうか。