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原題 Le monde des cactus
著者 Denis Diagre-Vanderpelen
ページ数 256
分野 植物、園芸、旅行
出版社 Racine
出版日 2019/11/19
ISBN 978-2390251064
本文 本書はサボテン好きによって書かれた、サボテン好きのための本である。お気に入りのサボテンを現地で見るというただそれだけのために大西洋を横断する情熱的な愛好家たちの旅行記がここにはある。彼らの旅は南北アメリカ大陸にまたがり、読者をペルー北部、アルゼンチン北西部、メキシコ、アメリカ南西部、チリの砂漠、ブラジル東部へといざなう。

複数の著者による複数の旅を通して、乾燥した環境のなかで生きるサボテン科植物の胸を打つ美しさが讃えられる。他方、厳密に言えばサボテン愛やサボテン学の枠から出そうな出来事も語られる。タイヤのパンク、不吉な安食堂、毒蜘蛛や毒蛇との遭遇、棘に刺さって怪我をした顛末。こうしたことは砂漠や山の旅の一部だ。冒険や逸話を余さず伝えるところに本書の個性がうかがわれる。さらに著者ら自ら撮影した数多くの写真は圧巻であり、6つの旅行記を鮮やかに彩っている。

これら6つの旅行記の他、本書はサボテンについて多角的な知識も与えてくれる。ジャン=マリ・ソリションによるサボテン科の植物学的説明、ドゥニ・ディアグルによるサボテン愛好の歴史、そして、サボテン栽培の専門家アイメリック・ド・バルモンによる栽培アドバイスにそれぞれ一章があてられている。

本書を読めば、読者は自分も現地にサボテンを見に行きたいと思うだろう。実際に海を渡ることがなくても夢を見ることはできるし、今までとは違ってサボテンを、美的にも、生物学的にも、生態学的にも、歴史的にも、厚みをもったものとしてながめることができるだろう。