ブックレビュー ブックレビュー

原題 MINE!
著者 Michael A. Heller, James Salzman
ページ数 288
分野 社会・法律・心理
出版社 Doubleday
出版日 2021/03/02
ISBN 9780385544726
本文 幼児が最初に覚える言葉の一つが「僕のだ!」。砂場ではプラスチックのバケツをめぐってこの言葉がよく飛び交う。大人の世界でも所有権の概念は当たり前のものとしてだれもが疑う余地もなく受け入れられている。土地や家から皿の上に残った最後のパイ一切れに至るまで、誰かが所有権を持っているのだ。

しかしこれが日常のもめごとから、国家間の紛争に至るまで争いの種になっていることは私たちも経験済みだ。飛行機の座席の後ろにあるスペースは、前の席に座った人のものか、それとも後ろの人に占有権があるのか。雪に埋もれた車を掘り出して仕事に出かけるとき、イスやコーンを置いておくことは駐車スペースを確保する方法として有効か。二つは要らない腎臓の一つを必要な人に売却するのはなぜ違法なのか。そもそも所有権とはどのように生じるのだろう。

実際にどのようなルールで動いているのかを探ると、その陰には様々なドラマが展開されていることがわかる。それを明らかにするカギになるのは経済学であり、心理学だ。しかしそれだけでは十分ではない。

筆者は「早い者勝ち」「現実占有は九分の利」「まいた種は自分で刈る」など所有と関わりがある格言を引き合いに出し、以前はこうした格言通りに収まっていた単純な問題が現代ではより複雑化していることを指摘する。現実には「遅い者勝ち」であったり、「現実占有は一分の利」であったり、「人がまいた種は自分が刈る」ことがよくある。本書ではそのメカニズムをわかりやすく解きほぐしている。

政府もビジネス界も一般人もどれが誰のものでそれはなぜなのかということを決めるルールを現状に合わせて変えている。そしてその選択の結果勝者と敗者が生まれる。今も昔もそうだった。少ない資源(それが食べ物だろうと、金だろうと、ときには愛人であろうと)をめぐり権利を主張する声に対処しようと、人間社会は知恵を振り絞っているのだ。殺し合いなどしなくても済むように。

複雑に絡み合った現代社会を理解するための知識も深まる一冊だ。