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原題 THE MADNESS OF CROWDS: Gender, Race and Identity
著者 Douglas Murray
ページ数 288
分野 社会・時事
出版社 Bloomsbury Continuum
出版日 2019/09/17
ISBN 978-1635579987
本文  ドキュメンタリー映画“Voices of the Silenced”にはかつて同性愛者だったものの、今では異性愛者になった人々が登場している。男性と結婚し5人の子どもたちに囲まれている元レズビアン。幼児期に妹の目の前で裸にされ母親から暴行が受けたのが原因で一時期男性にひかれるようになったことがあった29歳の男性。映画は「同性愛が生まれつきのもので変えることができないという考え方があってもよい。しかしそうでないこともあることも認めてもらいたい」と結論付ける。学問の世界でもメディアでも一方の立場だけしか取り上げられないように見えるからだ。「セクシュアリティは政治問題化されている」と映画は訴えている。

 筆者は社会に対する意識の高まりやアイデンティティ・ポリティクスの隆盛の危険性を考察している。切れ味鋭く生き生きとした筆致でいま最も議論の的になっている問題が吟味されていく。セクシュアリティ、ジェンダー、テクノロジー、人種についての分析の一方で、マルキストが「社会的認識の高揚」を生み出したことやますます広まるオンラインでつながる世界において「寛容の気持ち」がいかに大切かについても述べている。

 こうした問題に共通しているのはどれもそもそもの始まりは合法的な人権運動だったということだ。だからこそここまで広まったのだ。しかしどこかの時点で、ガードレールを乗り越えてしまった。あるCNNのプレゼンターは「行き過ぎはあるかもしれないが、かまわない。今はとにかく是正への道をすすんでいるのだ」と述べている。今のところ行き過ぎがあったのかどうかはわからないし、誰がそのことを世に知らしめれば信頼してもらえるかも明確ではない。

 保守派の論客である筆者はあえて世論の流れに異を唱え社会の大きな変革に疑問を呈している。昨今の”Black Lives Matter”問題をはじめ現代の苦難を乗り越える筋道を本書は提供してくれる。