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原題 Go with Your Talent
著者 Luk Dewulf
ページ数 140
分野 心理学/自己啓発
出版社 Lannoo
出版日 2012/08/16
ISBN 978-9401402965
本文 腹をくくった決断をする。それが、自分の得意なことをするという決断であれば、それこそ自己実現と本物の自分へと向かう最良の道筋だ。そしてそれ同時に、社会貢献に通じる出口でもある。スキルと才能を向上させればあなたは自然に周りにとってもかけがえのない存在になっていく。「得意なことをする」ということは生命保険のようなもので、年老いてからも仕事を、人生を楽しめることを保証してくれる。

 近年心理学の世界に新しい研究分野が生まれた。ポジティブ心理学である。従来の心理学はあまりにも問題点や異常点の追求に比重が置かれ過ぎていたが、ポジティブ心理学は幸福感、才能、前向きな感情、楽観主義、希望などといった前向きな事象に特化した心理学の分野だ。自分が得意なことを行い、そのために自分の才能を活用する。本書はそのためのヒントである。

 実のところ一日の中で得意なことをしている時間が一番長いという人は少ない。実際現実の社会では人は組織の目的達成に貢献することを強いられているため、自分の好きなことをするというのはわがままだと受け取られる。しかし調査によれば才能を十分に発揮できるようなことに携わっている人のほうが仕事に熱心に取り組み、良い結果を出す傾向にあることが分かった。これは教育の世界でもいえることで、自分の才能を見極め有効活用できる場を見つけた生徒のほうがたとえ学習時間が少なくとも良い結果を出している。

 才能とは何なのか。才能を見つけ、そこから多くを引き出すにはどうしたらよいか。過去の人生を基に作った「マニュアル」をこれからの人生にどう生かすか。自分の弱点や興味が向かないものにはどう対応するか。筆者はさまざまな理論を提示し、実例を示しながら、読者が実力をフルに発揮できるよう導いてくれる。才能は特別の人だけが持っているものではない。本書が強調しているのは「普通の人」が持っている「普通の才能」をそれぞれの場所で発揮することなのだ。