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原題 The Iconoclast
著者 Tobias S. Harris
ページ数 456
分野 政治
出版社 Hurst & Co Ltd
出版日 2020/10/01
ISBN 978-1787383104
本文 日本の首相として歴代最長の在位期間を誇り、2020年8月に突然の辞任を表明した安倍晋三元首相。新聞や雑誌を始めとする日本のメディアはその動静を追い、政治思想から実際の国家政策、ときにスキャンダルまで連日のように報道してきた。では、海外の目は安倍晋三をどうとらえ、どう評価しているのだろうか。著者は日本の国会議員のスタッフを務めた経験もある日本通の政治アナリスト。本書では日本人とは大きく違った視点から、平成最後の内閣総理大臣を見つめ、令和の世の日本が今どこへ向かおうとしているのかを検証する。

安倍晋三元首相の在任期間は困難の連続だった。トランプ、プーチン、習近平、金正恩、一筋縄ではいかない各国の強面政治家たちとやり合わなければならなかった。拉致問題の解決はいっこうに進展せず、自身が悲願とする憲法改正はついに実現できなかった。リオ五輪閉会式、大雨の中で自身もマリオのかっこまでしてアピールした東京五輪も、新型コロナウイルスの感染拡大で延期が決定した。さらに、相次ぐ国務大臣の辞任から桜の会やモリカケ問題まで、首相自身や周辺の醜聞や疑惑にも大いに悩まされた。国の難病指定を受けている持病の悪化で、二度も辞任に追い込まれるとは誰にも予想できなかったはずだ。

そうした紆余曲折の政治家人生にあって、著者は安倍晋三をIconoclast(因習を打破する者)と称し、本書のタイトルにも採用している。安倍晋三はどんな因習を打破したのだろうか。また、著者は安倍晋三という一人の政治家について、また安倍政権の功と罪について、どう考えているのだろうか。