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原題 Asteroids
著者 Clifford J. Cunningham
ページ数 232
分野 宇宙科学、天文学
出版社 Reaktion Books Ltd
出版日 2021/04/15
ISBN 978-1789143584
本文 イトカワ、リュウグウといえば読者にとっておなじみの名前だろう。探査機はやぶさ、はやぶさ2がそれぞれ訪れた小惑星だ。にわかに脚光を浴びることになった小惑星だが、そもそも小惑星とは何かという質問に簡潔に答えるのは難しい。彗星や隕石との違いは何なのか。最近では準惑星というのもあるが、それとはどう違うのか。どこにあるのか。何でできているのか。

最初の小惑星ケレスは1801年にジュゼッペ・ピアッツィと彼の助手によって発見されたが、彼らは歴史的な大発見をしたとは思っていなかった。それどころかピアッツィは星だと思って観察していた天体の位置が毎日違っていることで記録をしていた助手を叱責したぐらいだ。

やがて小惑星の発見ラッシュが始まる。ケレスのあと、パラス、ジュノー、ぺスタが相次いで発見される。中にはドイツのルターのように一人で24の小惑星を発見し、その功績を称えられて祝宴に招待された者もいる。同じ時期に見つかった海王星に比べると最初は学会からもあまり注目されなかったが、ゴールドラッシュと見まごうばかりの発見の嵐に小惑星は一時天文学のホットトピックとなった。

今日小惑星は太陽系のあちこちにあることがわかっている。小惑星がどこにあるかによって太陽系の初期の進化の様子を知ることができるので、その研究には大きな意義がある。しかしその重要性がはっきりと認識されたのは最近のことである。

本書は19世紀に始まった小惑星研究の歴史をもとにこの素晴らしい物体について最新の知見を伝えている。小惑星発見の歴史やタイプごとの詳しい解説に加え、アメリカの探査機ドーンに始まる探索の歴史(そこには当然はやぶさも登場する)、「星の王子様」やSF小説のように小惑星が舞台になったりテーマになっている大衆文化まで紹介されている。 小惑星は宇宙に浮いているただの岩ではない。地球上の生物の生死を理解するカギであると筆者は主張している。