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原題 #futuregen
著者 Jane Davidson
ページ数 224
出版社 Chelsea Green Publishing
出版日 2020/08/20
ISBN 978-1603589604
本文 20世紀前半、イギリスの一部をなすウェールズ地方の南部は、世界最大の石炭輸出量を誇っていた。しかし、その後の「エネルギー革命」によって石油へのシフトが起きると、地元の石炭産業は衰退の一途を辿った。こうした脱石炭化の流れは止まらず、20世紀後半のウェールズでは重工業、そしてサービス業への産業シフトが加速した。そんな社会構造の変遷を経験した21世紀のウェールズでは、次なる社会構造のシフトが起きようとしている。ウェールズは今、使い捨てプラスチック禁止法などSDGs(Sustainable Development Goals: 持続可能な開発目標)の実現を目指した積極的な法制化を行い、世界の注目を集めているのだ。

著者は長年、政治家・研究者として、ウェールズのみならず、イギリス全土で環境対策に取り組んできたエキスパートだ。環境対策の最先端を走るウェールズは2025年までに70%、2050年までに100%のカーボンニュートラルを達成するという極めて意欲的な目標計画『One Wales: One Planet』を掲げている。本書ではその計画を実行に移す人々の取り組みや地球環境問題の解決に向けた様々な法整備の軌跡が描かれている。

国や地域同士には国境があるとしても、差し迫った地球環境問題の解決には国境を超えた協力体制が欠かせない。人口400万人にも満たない静岡県ほどの面積である小国ウェールズは、世界中の政治指導者たちに向けて、どんなアピールをしているのだろうか。