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原題 The View from Breast Pocket Mountain
著者 Karen Hill Anton
ページ数 296
分野 自伝、エッセイ、文化
出版社 Senyume Press
出版日 2020/09/13
ISBN 978-0578696607
本文  シングルファーザーによって3人兄弟の一人として育てられた著者は幼少期を過ごした米国ニューヨークを飛び出し、広い世界へと旅立ちました。元々表現や創造に関心がありモダンダンスや演劇活動の経験がある彼女は、20代の初めにデンマークの城で住み込みの生活を始めたことをきっかけに、ダンサーやシェフなど様々な職業をこなしながらヨーロッパ、中東、アジアへと「あまり先のことは考えない」旅を続けます。時々自分の遍歴に疑問がわくこともありましたが、それよりも探求心と新たな経験への渇望が勝りました。バックパッキングやヒッチハイキングや車によって何か国も移動することによって彼女は世界を大観的見ることを学びました。さらにエリザベス・テイラー、リチャード・バートン、ジョセフ・ヘラー、ボズ・スキャッグス、ロバータ・フラックなどの著名人を含む数知れない魅力的な人々との出会いもありました。

そしてたどり着いた先は静岡県天竜市の懐山。いつしか4児の母となったこの黒人のアメリカ人は、日本に定住することを選び、日本での生活を綴るコラムニスト、コメンテーターとしてジャパン・タイムズ紙で絶大な人気を誇るようになりました。この魅惑的で心温まる回顧録は、著者が幼馴染だったアメリカ人の夫や子どもたちとともに小さな村の古い農家で自分たちの居場所を築き、地域に溶け込むまでや、書道二段を取得するにいたった道のりを紡いでいます。また日本での暮らしを描いた感動的な物語でもあり、著者がこよなく愛するこの国、文化、人々へのあたたかいメッセージが込められています。