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原題 DELICIOUS
著者 Rob Dunn, Monica Sanchez
ページ数 304
分野 人類学/自然科学/生物学
出版社 Princeton University Press
出版日 2021/3/23
ISBN 978-0691199474
本文  生態学者で進化生物学者のロブ・ダンと、人類学者のモニカ・サンチェスが、味について解説した本である。二人の著者は、人類生態学、人類学、物理学、化学、神経生物学、心理学などの多様な分野の知見を組み合わせ、味とその進化について説明している。
 過去数億年にわたり、動物が必要なものを獲得し、危険を回避できたのは味覚受容体のおかげである。私たちの祖先が進化的に変化したのは、道具を使い、おいしい食物を探して食べる方法を見つけたからであった。口の中で感じられる香り(味の一部)が重要になったのは、人間を含む霊長類全般の頭の中で起こった進化的変化のためである。アメリカ大陸で狩猟採集生活を送っていたクローヴィス人は、狩猟の対象にする動物を味で決めていたが、彼らが好んで食べていた動物はほとんど絶滅している。果物は、動物に好んで食べられるように進化してきたが、それを食べていた動物は絶滅し、人間が果物を食べている。私たちの祖先が香辛料を使い始めたのも、肉、果物、穀物の発酵を始めたのも、味のおかげである。人間は、おいしい味を求めて手の込んだ料理まで作る。私たちは皆で集まって食物を一緒に楽しみながら、これからも新しい味を追い求める。