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原題 THE BOOK ABOUT GETTING OLDER
著者 Lucy Pollock
ページ数 400
分野 医学、介護、社会問題、高齢化
出版社 Michael Joseph
出版日 2021/01/07
ISBN 978-0241423394
本文  誕生日を迎え、お祝いのケーキのろうそくを吹き消そうとするときふと頭の中を思いがよぎる――「来年はもしかしたらこの日を迎えられないかもしれないな」――こんな瞬間を初めて経験するのは何歳のときだと思いますか。イギリスでの統計によるとそれは何と、104歳です。

 人類は超高齢社会の時代に突入してきました。しかし高齢者はあまり嬉しそうにも見えません。それはそんな年齢までどう年をとっていったらよいのかよくわからないからです。さらに、そういう高齢者の周りにいる人たちもどう対応したらよいかベストな方法を知っているわけではありません。自分がその立場になったら、あるいは愛する人がそうなってしまったら、どうしたらよいのか途方に暮れてしまうもの。しかし、これらはいつまでも後回しにできる問題ではありません。

 認知症、身体的機能の低下、致命的な病、離別について他人事としてなら自然に話し合うこともできるものですが、友人や配偶者、親や子どものこと—つまり自分の身近な間柄の話として現実味を帯びてくるともうだめです。一番話をしなければならない本人に向かって口火を切るのはどうもためらわれてしまします。しかし高齢者とそうでない人たちの間にあるバリアを除去するためにコミュニケーションは不可欠です。あなたのことを思ってこのことは言わないでおこう、ではなくて、あなたのことを思っているからこそこの話をするんだよ、と伝えなければならないのです。

 老年病専門医というあまりなじみのない専門科の筆者が自ら病院で体験した数々の実例と科学的データを紹介しながら、老いについてわかりやすくユーモアたっぷりに語っています。食事、運動、転倒の危険性、排泄コントロール、投薬… 悩みの種はそこらじゅうに転がっていますが、経験豊かな筆者が的確なアドバイスをしてくれます。

さらにこのコロナウィルスのおかげで今まで曇ったガラスを通してしか見ていなかった「老い」という現象にまっすぐに光が当たるようになりました。家庭のみならず、クリニックでも、病院でも、施設でも、介護する側もされる側も大小の問題を抱えていることがクローズアップされています。それに取り組むためには少なくとも誠実な姿勢が必要なこと、知識を共有し未知に対して謙虚でいること、そして何よりも何が一番大事なのかを包み隠さず話し合うことが必要だと著者は述べています。