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原題 GUARDED BY DRAGONS
著者 Rick Gekoski
ページ数 256
分野 エッセイ、文学、歴史
出版社 Constable
出版日 2021/07/08
ISBN 978-1472133854
本文  本書は希少本ディーラー歴50年以上の筆者、リック・ゲコースキーの希少本を追う人生において出会った、奇妙で謎多き希少本にまつわる逸話をまとめたものだ。ゲコースキーが取り扱っている希少本の多くは、点数が少なく、その存在すら定かではないものだが、人から人に口伝えで語られる情報を頼りに、まるで昔話の宝探しのように探し当てていかねばならない。

 話はゲコースキーが希少本収集をするきっかけとなった、彼にとっての希少本第1冊、DHローレンスの初版本とちょっと怪しげなバーミンガムの駐車場から始まる。そしてゲコースキーが幸運にも出会い、出版に携わった文豪たち、ウィリアム・ゴールディングやサルマン・ラシュディ、グレアム・グリーンなどとの交流の記録が披露される。ゲコースキーがこの世界で生き抜いてこられたのは、間違いなく彼の強運のおかげでもあるが、人一倍修羅場も潜り抜けてきた。例えば詩人シルヴィア・プラスが個人所有していた、『グレート・ギャッツビー』の原稿が突如手に入ったと思いきや、同じく詩人でプラスの夫、テッド・ヒューズがその返却を求め、泥沼化したエピソードなども語られる。ほかにも、ゲコースキーが希少本を手に入れるためにとってきたあらゆる手段やエピソード――例えば本来なら絶対にやってはいけない、自分よりずっと金持ちな相手と訴訟問題になるとか――が、次から次へと繰り出される。

 本書は、魅力的かつ、軽やかで洞察力のある筆者の筆致で一度読み始めた読者の心を最後まで決して離さない、手に汗握る一冊だ。筆者の特異な職業から彼にしか書けない本書は、英文学ファンにとどまらず、すべての本を愛する人間が一度はのぞいてみたい世界を見ることのできる、唯一無二の魅力ある本であることに間違いない。