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原題 THE GREATEST ADVENTURE
著者 Colin Burgess
ページ数 338
分野 宇宙科学、歴史
出版社 Reaktion Books
出版日 2021/08/12
ISBN 978-1789144604
本文  宇宙開発競争は20世紀における、もっとも熾烈な技術競争だったと言えるだろう。主に1950年代から本格化した宇宙開発競争は、多くの技術改革、発見、そして探検を人々にもたらした。

 本書はこの宇宙開発競争が最も華やかであった1950年代から70年代までの数々の出来事を、筆者の詳細な調査に基づき、関係者の回想なども含めて追っていく。まずはソビエトの数々の功績、世界で初めて人工衛星スプートニク1号を地球周回軌道に送り込むことに成功したこと、世界で初めてまずは犬のライカを宇宙に送り出し、続いて人類初、ガガーリンを地球軌道周回させ、世界初の女性宇宙飛行士ワレンチナ・テレシコワを宇宙に送り出したこと、そして人類初の宇宙遊泳をアレクセイ・レオノフが成し遂げたことなどをアメリカとのし烈な競争関係を含めて描く。そしてかの有名な、アメリカによる人類初の月面着陸に至るまでの過程とその成功についても詳しく扱う。

 宇宙開発戦争は月面着陸で一つの頂点を迎えたかもしれないが、その後も競争が終わることはない。本書はその後の国際宇宙ステーション建設から、現代にいたるまでの数々の成功と悲劇なども扱ったうえで、現在の最新の宇宙開発の方向性、特に一般人の宇宙旅行実現が目前に迫っていることなどに言及する。イーロン・マスクのSpace X社やジェフ・ベゾスのBlue Origin社など、民間経営者たちによる宇宙開発の進展とともに、我々日本人の記憶にも新しい、株式会社ZOZO元社長の前澤友作氏の宇宙旅行計画なども扱われている。

 本書で描かれているように、宇宙開発は今や民間人の参画も含めて、新たな時代に入っており、日々進展しているものだが、我々一般人にとっては案外月面着陸で記憶が止まっており過去のものとなっているのではないだろうか。今一度、この最新技術の足跡と、最新動向を一つの流れとして知ることで、多くの読者が驚きと発見を得ること間違いなしだ。