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原題 THE PRIDE GUIDE
著者 Jo Langford
ページ数 192
分野 社会問題、人類学
出版社 Rowman & Littlefield
出版日 2021/06/01
ISBN 978-1538126677
本文 ティーンエイジャーのLGBTQIA+をテーマとしており、その子どもを育てる親の「子育て」にも焦点を当てている。

特に強く訴えているのは偏見や自殺に関わる部分である。現代の教育は、社会的にも政治的にもLGBTに対する偏見を時に助長しかねないものである。アメリカのティーンエイジャーのうち、およそ100万人が同性愛者であるにもかかわらず、性教育で同性愛者について扱われることはない。そして、他のマイノリティーグループと比較して、LGBTの子どもたちは学校でも家庭でも暴力の被害に遭っている割合が高く、LGBTではない子どもと比較し、4倍にも及ぶ子どもたちが自殺を試みている。また、家から追い出されてホームレスとなるケースも多く、アメリカの若者のホームレスのうち、LGBTQの占める割合は約40パーセントを占める。

本書は、子どもたちに対して「理解してくれる仲間や家族とのつながり」「我慢」「情報の重要性を説き、直面する困難や悩みごとに対する具体的な対処法を示す。LGBTQの子どもを持つ親に対しても、「安全な場の提供」「性について子どもと話をする」「同性愛に関する固定観念にとらわれない」など、子どもを守るためのさまざまなアドバイスをしてくれる。

シリアスで重要なテーマでありながらも軽いタッチでユーモアを交えながら書かれているところが、本書の特徴であり、魅力だろう。

本書は一種の百科事典の様相を呈している。たとえば生物学の話からLGGTQIA+のカミングアウト、そしてデートから「宗教」、行きずりのセックスから個人の安全まで、性に関して多岐にわたるトピックに沿って書かれている。
現在の社会でLGBTQIA+を取り巻く状況を理解したい読者、これからの社会で求められる性教育とは何かを知りたい読者にとって必読の書といえる。