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原題 The Amazon Way
著者 John Rossman
ページ数 168
分野 企業・経営、ビジネス自己啓発
出版社 Clyde Hill Publishing
出版日 2021/04/13
ISBN 978-1734979169
本文 Amazonがここまでの世界的な大企業に成長した秘密は何か? イノベーションを繰り返し、世界的なヒットサービスを出し続け、パンデミックをも乗り越えて会社を永続的に繁栄させる秘訣とは? 本書の著者でAmazon元幹部でもあるジョン・ロスマンの答えはシンプルだ。それは「リーダーシップ」。リーダーシップこそイノベーションを成功させる最も予測可能な要因であるという。Amazonでは、社員ひとりひとりがリーダーであるという自覚のもと、すべての日々の活動において「リーダーシップの14箇条」を実践するよう求めている。それは、ジェフ・ベゾスが執拗なまでに追求する「顧客第一主義」にはじまり、だれもが会社全体のことを考えて行動する「当事者意識」、Amazonに様々なイノベーションを巻き起こした「創造と単純化」の原則、ビジネスに重要な「コスト意識」や「結果を出す」ことまで多岐にわたる。何よりも重要なのが、この14箇条が「絵に描いた餅」でも「壁の標語ポスター」でもけっしてないことだ。Amazon社内では常に、日々の会議で、あらゆる面接で、すべての議論において「実践」されているものである。

本書では、その14箇条の各項目について、著者がAmazon幹部時代に体験したエピソードをもとに具体的に説明されている。たとえば第1章では、ジェフ・ベゾスの病的なまでの顧客第一主義が多くのイノベーションにつながったことを詳述する。「お客様にとって最高のエクスペリエンスとは、お客様自身がサービス提供会社へ“何も望まないこと”」という洞察をもとに、コールセンターをなくすという類を見ない試みを成功させることで、雑務が減り、開発に時間をかけられるようになって生産性が増した。低価格や配送料無料などの顧客体験を向上させる仕組みを作ることで、顧客満足度や取引量が増え、企業の成長が加速した。このように、Amazonが世界を席巻するサービスを生みだし続ける秘密が、この14箇条に集約されている。

Amazon幹部としての実体験を、経営アドバイザーとしての俯瞰的な視点から描く「Amazon流」リーダーシップの原則。Amazonのイノベーションの数々のエピソードは興味を引くだけでなく、読者ひとりひとりが考え、行動するための指針を与えてくれる。