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原題 The Values Economy
著者 Alan Williams, Samuel Williams
ページ数 224
分野 経済、ビジネス
出版社 LID Publishing
出版日 2021/05/11
ISBN 978-1912555802
本文  ICT技術の急速な発展と普及は、数十年前には想像もできなかった高度に複雑化した現代社会を生み出した。こうした社会構造の巨大なシフトにともない、人々の購買心理も大きく変化してきている。消費者や取引先、従業員や株主など、企業活動を取り巻く多くの利害関係者はこれまで、社会全体に向けて情報発信する手段を持ちえなかった。ところが昨今のソーシャルメディアの登場により、そうした人々の意見は一瞬にして拡散され、企業経営にも大きな影響を及ぼすようになった。またSDGsや職場での差別解消、労働環境改善や地球環境問題など、その企業が重んじる社会的価値や責任に、人々の関心が集まるようにもなった。消費者や従業員の発言権が増し、人々が企業価値に基づいて、商品やサービスを選択し、企業ブランドが様々な利害関係者によって形成されるようになったのだ。
こうした状況はValues Economy(価値経済)という新たなパラダイムをつくり上げた、と著者は説く。本書ではブランド・アイデンティティー、顧客体験、従業員エンゲージメントを三本の重要な柱と位置づけ、著者が独自に提唱するSERVICEBRAND(ルビ: サービスブランド)アプローチという手法を用いて、企業価値を向上させながら、持続的な好業績を実現する枠組みと、その実践方法を紹介する。またサービス業界で注目を集める様々な企業の中から7社を選出し、SERVICEBRANDアプローチの観点から考察していく。
 サービスの質やブランドだけに頼るビジネス戦略は、もはや通用しない。多くの利害関係者が共感する企業の価値について考えさせる一冊だ。