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原題 The Coder of OZ
著者 Nisa Inci
ページ数 192
分野 児童書(フィクション)、プログラミング
出版社 Taze Kitap(トルコ)
出版日 2018/01/01
ISBN 978-6056883514
本文  ドロシーがふしぎなメガネをかけると、嵐にまきこまれて「オズクラフト」という名のソフトウェアの世界へ――というなんともユニークな書き出しから始まる、コーディングを扱った児童書、その名も『Coder of Oz(オズのコード使い)』。近年子ども向けのプログラミング関連本は少しずつ増えているが、本書はファンタジーの名作『オズの魔法使い』とコーディングを組み合わせた、ほかには類を見ない一冊だ。

ソフトウェア・ディベロッパーになることを夢見る少女が、かかしやライオンといったおなじみのお供を連れてエメラルドの都をめざすという筋書きで、ほとんどが物語メインで進行し、ふつうの読み物としても抵抗なく読み進められる。しかしその物語のなかに、アルゴリズムの仕組みや進数、ASCIIコードなどを使って様々な試練を乗り越える様子が描かれているのだ。コンピューターを攻撃するマルウェア「トロイの木馬」が行く手を阻む罠として登場するなど、読者を物語とコーディングの世界に引き込むユーモアと工夫にあふれている。コーディングの基礎がまるで冒険を進める手がかりのように組み込まれているため、パソコンに全く興味のない子どもでも楽しんで読み進めることができる。

さらに巻末の「辞書」のセクションで、物語に出てきたコーディングの基礎がコンピューターの世界で実際にはどのように使われているのか分かりやすく、親しみやすい口調で説明されており、物語を追うだけで終わることなく、子どもたちのプログラミングへの好奇心を刺激する内容となっている。
楽しい冒険物語でプログラミング的思考力を養う、唯一無二の作品。