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原題 Vantage Points
著者 Paula Leach
ページ数 232
分野 経済、ビジネス、リーダーシップ、組織論
出版社 LID Publishing
出版日 2021/02/11
ISBN 978-1911671008
本文  リーダーシップとはいったい何だろうか? 経営コンサルタントである著者は、リーダーシップとは従業員たちを支援し、思考やものの見方をAという状態からBという状態に改善することだと定義する。
組織のリーダーについて考えるとき、どの役職についているかは問題ではない。また従業員に何かを押しつけるだけではリーダーのあり方として望ましくない。組織内での生産性を高め、従業員間での協力・連携をうながし、彼らが主体的に行動できる環境を整えるためにリーダーは存在する。あらゆるリーダーに求められるのは、従業員のポテンシャルを引き出し、その強みを活かすことなのだ。
 組織の大小にかかわらず、リーダーは2つの主たる責任を担っていると著者は考える。1つは明確な目標を定め、従業員間で共有すること。そして2つめは、従業員への権限移譲を行い、彼らが創造性をいかんなく発揮できるようにすることだ。
 本書では25年以上にわたる多国籍企業や公共セクター、急成長中のスタートアップ企業での経験をもとに、企業経営者としても活躍する著者が、ビジネスリーダーが持つべき5つの視点(バンテージポインツ)について解説している。著者はリーダーの視点がバンテージポイント(vantage point)ではなく、複数形のバンテージポインツ(vantage points)であることの重要性を指摘する。組織全体で起きるさまざまな事象を結びつけて考え、体系的に理解する上で、単数ではなく複数のバンテージポインツが大きな効果を発揮するからだ。
 また本書の後半部では、明確な目標設定と従業員への権限移譲を実現するのに有用な、さまざまな実践例や実用的な手法が紹介される。優れた企業文化の醸成と強固な組織構築を目指すビジネスリーダーに一読をすすめられる一冊だ。