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原題 Polling UnPacked
著者 Mark Pack
ページ数 288
分野 政治、時事、社会問題
出版社 Reaktion Books
出版日 2022/04/11
ISBN 978-1789145670
本文 世論調査は政治、特に選挙にきわめて大きな影響力をおよぼしてきたが、近年、その信頼性が揺らぎつつある。本書では、イギリスの自由民主党主席であるマーク・パックが世論調査の歴史をたどり、世論調査がどう利用されてきたか、濫用されてきたかについて検証していく。

19世紀に始まった世論調査は、その大きな影響力ゆえに、20世紀には政治家によって禁止されることもあった。やり方次第で世論を操作することが可能な世論調査は、さまざまな問題を抱えている。自らも世論調査員として活動したこともあるパックは、本書で世論調査がどのように行われているかについて詳しく論じ、世論調査の功罪や、信頼できる世論調査と信頼してはならない世論調査の違いをわかりやすく説明していく。アメリカで投票所での出口調査が本格的に始まったきっかけ(投票者の声を訊くよう命じられた調査員が、階段を上り下りして高層アパートに住む投票者の家まで行くのが面倒くさかった)など、調査にまつわるおもしろいエピソードもふんだんにつまっており、世論調査や統計学などの専門的な知識のない一般読者から、熟練の世論調査員まで、多くの人が楽しめる内容となっている。

中心的に扱われているのはアメリカとイギリスの世論調査だが、アメリカと比べて馴染みの薄いイギリスの政治・選挙についても、日本の読者も本書から大いに学ぶところがあるだろう。真実とフェイクの見分けがつきにくくになっているネット社会の現代において、世論調査結果を正しく判断する材料、知識を提供してくれる本書は必読ともいえるだろう。