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原題 THE ANATOMY OF ANXIETY
著者 Ellen Vora
ページ数 352
分野 精神医学、心理学、社会問題
出版社 Harper Wave
出版日 2022/03/15
ISBN 978-0063075092
本文 現代はまさに「不安に覆われている」と言えよう。推計では9人に1人が心の病になるという。中でも最も多いのが不安症で、世界でおよそ3億人が苦しむ。その数は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な大流行によって人とのつながりが希薄になっている今、ますます増加している。従来の医学では、不安は「脳の化学と心理的プロセスの問題」の一つとされてきたが、不安の根源は身体にもあるというのが真実らしい。
精神科医である著者のEllen Voraは不安には2種類あり、これらを識別することが重要であると力説する。彼女は日々の診療の中で、不安症状の原因を探っていくと、「身体の不均衡」にたどり着くことが多いことに気付かされた。慢性的な睡眠不足、偏った食事、深夜までSNSといった現代人が陥りがちな生活習慣が身体のストレス応答を誘発することで、コルチゾールやアドレナリンなどのホルモンの分泌が刺激される。その結果、緊急状態!との信号が脳に送られ、不安感に襲われるのだ。幸いなことに、このような身体が原因の不安は、食事のバランスやライフスタイルを改善するだけで容易に治療できるため、彼女は「偽りの不安」と呼んでいる。それでも、もっと深い不安、彼女が言う所の「本当の不安」が残るかもしれない。しかし、「偽りの不安」を取り除けば、「本当の不安」はもはや病気ではなく、「何か別の不均衡」を訴える内なるメッセージになる。別の何かは、人生、人間関係、仕事、そして、取り巻く世界…、それを特定して、元に戻すための道しるべとなるのが「本当の不安」である。
本書では、不安は病気の最終診断ではなく、自らの「不均衡」を探る始まりであると考えるEllen Voraが、不安を和らげるためにすぐに実践できる方法を処方していく。現代社会に生きづらさを感じているあなたへ贈る一冊。