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原題 Freezing Order
著者 Bill Browder
ページ数 336
分野 政治
出版社 Simon & Schuster
出版日 2022/04/12
ISBN 978-1982153281
本文 プーチンに追われた男、ビル・ブラウダーが『国際指名手配―私はプーチンに追われている』に続いて出版した本書は、莫大な金を盗用し、自らの邪魔しようとするあらゆる人間を亡き者にしようとするプーチンの犯罪行為を白日の下にさらす告発の書である。

ブラウダーの友人であった弁護士セルゲイ・マグニツキーは、ロシア税務当局が関与した2億3000万ドルにのぼる巨額横領事件を調査・告発した後、モスクワの刑務所に投獄され、2009年に殺害された。それ以来、ブラウダーは殺害者たちを追って正義の鉄槌を下すことを生涯の使命としてきた。マグニツキーが殺害される原因となった2億3000万ドルの横領の背後に誰がいるかを突き止めようと調査を進めたブラウダーは、ロシアからバルト三国、キプロス、西ヨーロッパ、南北アメリカへと横領金の流出をたどるうち、プーチン自身がこの事件にからんでいるという驚くべき事実を知ることになる。

ブラウダーがマグニツキー法を成立させ、資産凍結を実現すると、プーチンの復讐が始まった。ハニートラップを仕掛け、ブラウダーのロシア人仲間をさらに殺害し、アメリカのトップ弁護士や政治家にもブラウダーの追い落としを働きかけたのだ。さらに、2016年のアメリカ大統領選へのロシアの介入は、プーチンの腐敗政治を暴こうとするブラウダーの動きによって引き起こされたものであることが本書で明かされる。

まるでスリラー小説のような緊張感に満ちた本書は、正義を求める男の苦難と勝利への道のりを語ってくれる。ロシアのウクライナ侵攻についてもコメントを求められるブライダーが明らかにするプーチンの真実は、世界の注目を集めるロシア=ウクライナ問題を考察するうえでも有益だろう。