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原題 Amber
著者 Rachel King
ページ数 272
分野 地学、歴史、工芸
出版社 Reaktion Books
出版日 2022/08/31
ISBN 978-1789145915
本文 琥珀は、ニュースの一面をよく飾る宝石だ。木の樹液が長い歳月をかけて化石化することによりできる琥珀は、まさに自然界のタイムカプセルだ。琥珀に閉じ込められた蚊の体内に残っていたDNAから、恐竜を蘇らせるという1993年の大ヒット映画『ジュラシック・パーク』。そのような琥珀は実存するのだろうか。この研究分野は多くの研究者たちを魅了し続けている。

人々が琥珀に初めて出会ったのはいつだろうか。約4万年前の氷河期後期、狩猟生活を営んでいた人々が琥珀を使っていた痕跡が発見されている。何万年ものあいだ人々は琥珀のオーナメントや首飾りを作り、ときには女性や女神の象徴として命尽きた肉体の上に供えてきた。だが琥珀の使用方法は装飾や神への貢物にとどまらない。ときに琥珀は医療用としてサウナなどで燃やされ、芳香オイル用に粉砕され、その結果おおくの琥珀が失われてきた。

バルト海沿岸の浅瀬や浜辺で数多く採取されてきた琥珀は、16世紀のヨーロッパでは海のものか山のものか意見が分かれていた。16世紀から17世紀にかけて地層から琥珀が採掘されていたペルシャでは、地層のなかでできるタールに似たものだとも考えられていた。

さらに人類はその美しい輝きを求めて、琥珀の人工製作に乗りだす。漢王朝時代(紀元前206年から起元後220年)以降、装飾品や髪飾りとして琥珀が重宝されてきた中国では、紀元後200年から250年頃から人工製作が試され始めた。またヨーロッパでも少なくとも1400年代から人工製作が行われている。あの有名なレオナルド・ダ・ヴィンチも人工琥珀の製作に挑んだ一人だ。

本書は過去3千年を中心に、人々と琥珀との関わりを紐解いていく。進化の歴史が閉じ込められた、自然界のタイムカプセル「琥珀」。未来の人類そして地球に待ち受けるものは何か、その糸口が隠れているに違いない。