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原題 The Burnout Challenge
著者 Christina Maslach, Michael P. Leiter
ページ数 272
分野 心理学/経営/ビジネス自己啓発
出版社 Harvard University Press
出版日 2022/11/15
ISBN 978-0674251014
本文 二人の心理学者が職場の燃え尽き症候群の原因を解明し、組織の活力を高め生産性を上げるべくリーダーがやるべきことを明かす

燃え尽き症候群は、現代の労働者が直面する職場での最も重大な危機ともいわれる。その上、最も誤解されているのではないだろうか。

燃え尽き症候群は、とりわけ個人的な問題だと思われがちであると著者らは説く。労働者自身がカウンセリングを受ける、リラックス法を考える、転職する等の方法で解決されるものと考えられがだが、そうではない。解決するためには、職場をうまく管理し、労働環境を改善することが重要であると主張する。

本書は、大量の研究データと実例を引用し、組織が持続可能な生産性を促進するためにどう変革できるかを示している。あなたの組織の従業員は、極度の疲労を感じ、業務に対して悲観的な感情を抱き、作業効率を低下させていないだろうか。これらは、燃え尽き症候群の代表的な特徴だ。上司は、部下の自己評価査定を実行し分析し、職場の問題や解決の可能性を見いだすべきである。組織に変革が必要な場合、実践的な証拠に基づいた本書の指針が参考になるだろう。手始めに、難易度がそれほど高くない改革でありながらも、従業員が生きがいを持てる効果的な改革をして、その先に更に大きな改善を実行するための種まきをすることが大切だと著者は説く。従業員が「負担とは感じないけれども、意味があると感じられるような小さな変化」の積み重ねが大切であり、職場の環境は、こうした積み重ねの結果改善されるものなのだ。

アメリカでは、年間5000億ドル以上、5億5000万時間を超える労働時間が職場でのストレスによって無駄になっていると推定されている。その多くは、機能不全に陥っている職場環境が原因だ。組織の方針や優先事項が良い方向に変化するにつれて、従業員の仕事の効率性、健康状態、および幸福度は必ず向上する。それには、本書に示されているような、実用的であり創造的でもある、費用対効果の高い解決方法が役立つだろう。