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原題 Co-Creating Change
著者 Jon Frederickson
ページ数 532
分野 精神医学/心理学
出版社 Seven Leaves Press
出版日 2013/05/27
ISBN 978-0988378841
本文 本書は、こころに問題を抱えた患者の治療に従事するセラピストに向けた本である。精神療法に関する本は数多く存在するが、本書は臨床記録がふんだんに盛り込まれており、いつどのように、患者の気持ちや不安、防衛機制にフォーカスすればよいのか詳細な説明がなされている。治療に対して抵抗感をもつ患者を助けるためにセラピストは何をすべきか、患者とセラピストが一緒になって治療同盟を築きあげるにはどうすればよいのかが明快に示されている。神経生物学や、愛着や感情についての最新の調査とともに精神療法の技法を記した一冊である。
筆者によれば、患者が専門家のもとを訪ねてくるのは自分のアイデンティティを確立しようという自由意志を失っているからであり、また一方で、患者は、本当は何かを変えたいと思っているのに、無意識のうちに防衛機制が働き、自身の自由な意志を阻害しているものに目を向けることができずにいる。そうした葛藤はつぎのように表出する。(1)気持ちを抱く、(2)おのずと身体的な不安におそわれる、(3)ほどなくして元々の気持ちを回避しようと防衛機制が働く、(4)防衛機制が身体症状を生み、さまざまな問題が発現する。
セラピストの役目となるのは、患者が愛する自由、人生を楽しむ自由、素晴らしい人生を築く自由を取り戻すための手助けをすることである。患者が自身の本当の気持ちに気づけるようになり、抵抗や自滅的な行動から解放されるために、セラピストはどうすればよいのか。本書は具体例を提示したロードマップとなっている。