原題 | The Human’s Complex |
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著者 | Dr Zamir Mohyedin, Nurhanisah Mahdan (NHM) |
ページ数 | 205 |
分野 | 心理学 |
出版社 | The Patriots Publishing |
出版日 | 2019/09/01 |
ISBN | 9789671734421 |
本文 | 本書は、人間の思考、感情、行動を形作る複雑な心理的メカニズムを一般読者向けに解説している。医学物理学の博士号をもつZamir Mohyedinと、幅広い知識を有する著述家N.H.M.の共著により、科学的な根拠をもとに、日常的に遭遇するさまざまな心理現象を身近な例や、物理学の視点から生まれる洞察を交えて読み解いていく。 たとえば、それほど能力の高くない人ほど自分の能力を過大評価する傾向がある。これは、自分の能力が低いということを認識できないからである。その一方で、比較的能力の高い人ほど自分の能力を過小評価する傾向がある。これは、自分の知識やスキルを当然のことと考え、他の人も同じくらい理解していると錯覚しやすいからである。つまり、自分がどの程度無能であるかを理解するためにはある程度の能力が必要だということだ。育成対象者の自己認識のずれを解消させるためには、間違いを指摘したり関連する知識を与えたりするとよい、ということも研究で示されている。 また、数学が苦手なのは、数学が難しいからではない。数学に対する不安が数学を難しいものにしているのだ。叱られた経験や恥ずかしい思いをした経験、制限時間によるプレッシャー、「私は数学ができない」という思い込み。こうした不安がワーキングメモリを低下させることになる。こうした心理現象を知ることで、教師や保護者が学習者の不安を取り除き、効果の高まる学びを促すことができるようになる。 タイトルの「complex」は、人間の感情、記憶、知覚といった根源的な要素が織りなす複雑なパターンを指し示しており、人間の行動を単一の理由で捉えるのではなく多角的な視点から理解することの重要性を示唆している。日常の意思決定や人間関係構築の際のヒントが散りばめられた書籍となっている。 |