原題 | Our Bodies, Our Planet |
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著者 | Prof. Marcus Hall |
ページ数 | 328 |
分野 | 生物、環境、地球史 |
出版社 | Reaktion Books |
出版日 | 2025/09/01 |
ISBN | 978-1836391074 |
本文 | 本書は、前半で、人類と寄生虫との関係について、その戦いの歴史も交えながら解説し、後半で、人類もまた地球に寄生する存在なのだと述べる。そして、最終的には、人類と地球との関係についても問いかけている。 日常生活に潜むワームの話から始まり、様々な事例を挙げながら、謎に包まれた寄生虫の世界を紐解いていく。その展開は、まるで物語のようで、読者は冒頭から著者の世界に引き込まれてしまう。中でも、寄生虫が感染症に対する抵抗力を宿主に提供し、宿主の長寿に資することもあるのだというエピソードは印象的だ。 読み進めていくと、人類と寄生虫を取り巻く生物圏、すなわち地球環境へと視点が広がり、ガイア論も絡んだ壮大なテーマに展開していく。人類は、寄生虫を忌み嫌いながら、一方で、地球に対しては、寄生虫のように振る舞ってきたのだ。著者は、人類と寄生虫の関係のみならず、人類と地球の関係についても問い質しているのである。 本書の最大の魅力は、豊富な事例と、緻密な考察とで展開されていく、高度な議論にある。しかしながら、そこに複雑な数字や数式は一切含まれず、難解になりがちなテーマを平易に伝えている。寄生虫や地球環境に関心のある読者にぴったりの書籍であることはもちろん、専門的な知識がなくても気軽に読める構成となっている。 その両者に造詣が深い読者なら、さらに本書を楽しむことができるだろう。本書は、『寄生』というキーワードを通じて、ヒトと寄生虫の奇妙な関係、ヒトと地球の奇妙な関係について、多くの学びが得られる一冊だ。 |