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原題 GoldenRuleism
著者 Craig Cline
ページ数 46
分野 思想哲学、自己啓発
出版社 MindStir Media
出版日 2024/05/01
ISBN 978-1962987615
本文 本書は、現代を生きる私たちに向けて、他者との関わりや世界の在り方を抜本的に変える力を秘めた「ゴールデン・ルールイズム」という新たな考え方を紹介している。

「ゴールデン・ルールイズム」は、「自分がしてもらいたいことを他人にしてあげなさい」という、聖書に由来する古くからの教え(ゴールデン・ルール)をもとに発展させた考え方だ。「自分がしてもらいたいことを、直接・間接を問わず、他者にしてあげなさい」、「自分がしてもらいたくないことを、直接・間接を問わず、他者にしてはならない」という2つの簡潔な原則を柱としており、宗教や信仰に関係なく誰もが実践することができる。

著者はこれらの原則を通して、すべての他者に対し、思いやりの気持ちを持って「何らかの行動を起こすこと」が重要だと教えてくれる。たとえば、困窮する人々に対しては、食べ物や住む場所を直接提供するだけでなく、非営利組織に金銭などを寄付して間接的な支援を行うこともできる。「すべての他者」とは、人間のみならず、食用や娯楽、興行などのために、人間によって利用されている「人間以外の知覚を持つ動物」も含まれる。こうした動物たちが置かれている状況に対しても関心を向ける必要があるという主張は、種差別について考える契機となり得る。

「ゴールデン・ルールイズム」は、人々の暮らしやコミュニティーの中で他者への思いやりを育む基盤となるだけでなく、個人、家族、地域社会というレベルを超えて世界的な視点で、グローバルな倫理的規範を作り上げる足掛かりとなる。日々、家族や友人とともに「ゴールデン・ルールイズム」に基づいて行動すると誓いながら暮らすことで、互いのために前向きな一歩を踏み出すことができる。コミュニティーでは、「ゴールデン・ルールイズム」に基づいて子どもの食などを重視した倫理原則を定めることも可能だ。個人やコミュニティー単位でのこうした取り組みが、やがて世界規模の「グローバル倫理」を形作る。「ゴールデン・ルールイズム」は応用範囲が非常に広く、幅広い世代の人々に、「日々、思いやりを持って行動することの大切さ」を改めて気付かせてくれる一冊だ。